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焚き火の起こし方 小さな火種を、夜の主役に育てるまで

· 泊まり火編集部

焚き火は、点けるものではなく育てるものだ。ライターの火をどれだけ近づけても、太い薪は燃えてくれない。けれど順番さえ間違えなければ、火は驚くほど素直に育つ。マッチ一本の光が、夜の主役になるまで。初めての人のために、その順番を書いておきたい。

薪を知る(針葉樹は火付き、広葉樹は火持ち)

薪売り場の前で迷ったら、思い出してほしいことはひとつだけ。スギやヒノキ、マツといった針葉樹は、油分を含んで火付きが良い。燃え上がりが早いぶん、燃え尽きるのも早い。ナラやクヌギなどの広葉樹は逆で、火は付きにくいが、いったん燃えれば長く静かに燃え続ける。つまり針葉樹は序盤の焚き付け役、広葉樹は夜を支える主役だ。

そして火は、小さいものから大きいものへしか渡れない。最初に燃やすのは火口(ほくち)。ほぐした麻ひも、乾いた枯れ葉、松ぼっくり、丸めた新聞紙。そこから小枝へ、指ほどの中薪へ、腕ほどの太薪へ。この階段を一段ずつ用意しておくことが、着火前のいちばん大事な仕事になる。

組む(井桁か、合掌か)

薪の組み方に正解はないが、覚えておくと心強い型がふたつある。ひとつは井桁(いげた)型。薪を「井」の字に組み上げる櫓で、四方から空気が入り、火柱がまっすぐ立つ。燃えが早く、炎の勢いを楽しみたい夜に向く。もうひとつは合掌型。中心に火口を置き、小枝を円錐形に立てかけていく、いわばテントのかたち。炎が自然と中心に集まるので火が育ちやすく、初めてならこちらを勧めたい。

どちらの型にも共通する原則がある。火は酸素を食べて育つ、ということだ。薪と薪のあいだに、風の通る隙間を残す。びっしり詰まれた櫓は立派に見えて、火にとっては息のできない部屋になる。

点ける(下から、風上から、あとは任せる)

炎は上へ向かう。だから火を点けるのは、いちばん下の火口だ。風のある日は風上側から点ければ、風が火を薪へ運んでくれる。頬に風を感じる向きを、一度確かめてから膝をつく。

火口が燃え、小枝がぱちぱちと鳴りはじめたら、そこからの数分はただ見守る時間だ。心配になって突いたり崩したりしたくなるが、いじるたびに熱は逃げる。焚き火の上達とは、手を出さない我慢を覚えることでもある。薪を足すのは、いまの薪に炎がしっかり回ってから。一本ずつ、そっと隙間に置く。火が安定したら広葉樹に切り替えて、夜は長い持久戦に入る。

夜の闇に火の粉を舞い上げて燃える焚き火
Photo: kallerna / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)

薪ごと任せられる宿: KEIKOKU GLAMPING TENT

KEIKOKU GLAMPING TENT公式サイトよりグランピング東京都 · 檜原村KEIKOKU GLAMPING TENT最大2名施設ページを見る →

初めての火起こしなら、道具のそろった場所で試すのがいい。東京・檜原村、奥多摩の渓谷沿いに2棟だけ建つプライベートヴィラには、焚き火台が備わり、薪は無料。清流の音を聞きながら、心ゆくまで火と向き合える。しかもここでは風呂までが薪焚きだ。薪のプライベートサウナで汗を流し、屋外ジャグジーで川風に当たり、夜は焚き火。無人チェックインだから、火を育てる時間を誰にも邪魔されない。都心から車で約90分の火の学校である。

湯上がりの火が待つ宿: AMAO VILLA 伊豆高原

AMAO VILLA 伊豆高原公式サイトよりヴィラ熱海・伊豆(静岡) · 静岡県AMAO VILLA 伊豆高原最大12名 · 126,000円〜 / 泊施設ページを見る →

伊豆高原の緑に囲まれた一棟貸しの別荘は、最大12名。テラスのガスBBQで夕食を済ませたら、焚き火台の出番だ。大人数なら火起こしは自然と分業になる。枝を並べる人、組む人、点ける人。石造りの屋内温泉で温まってから火を囲めば、夜風と火照りの温度差が心地よい。愛犬も一緒に泊まれる。城ヶ崎海岸駅から徒歩約10分。薪や着火剤の用意があるかは、公式サイトで確認してほしい。

つまずきの多くは、急ぎすぎ

うまくいかない焚き火には、だいたい同じ理由がある。いちばん多いのは、太い薪にいきなり火を点けようとすること。火の階段を飛ばしてはいけない。次に多いのが、薪の詰めすぎ。良かれと思って足した数本が空気の道をふさぎ、火を窒息させる。煙ばかり出て燃えないときは、薪が湿っているか、詰めすぎているかのどちらかだ。

そして、触りすぎ。火が弱ったように見えても、多くの場合は熾(おき)が育っている途中で、崩さずに待てば炎は戻ってくる。焚き火は手をかけるほど良くなる料理とは違う。仕込みまでが人の仕事で、あとは火の仕事だ。

富士の麓で火を育てる宿: ASH Villa 富士河口湖

ASH Villa 富士河口湖公式サイトよりヴィラ富士河口湖・富士五湖(山梨) · 山梨県ASH Villa 富士河口湖最大10名施設ページを見る →

富士山の麓・鳴沢村に建つ全2棟のプライベートヴィラでは、庭での焚火が過ごし方の柱になっている。半露天風呂で温まり、こだわりのキッチンで夕食を仕立て、夜は庭に出て火を組む。山の夜気は夏でも澄んで、火の暖かさがちょうどいい。ここも愛犬と一緒に泊まれる宿だ。薪の用意については公式サイトで確かめておきたい。

火の始末までが、焚き火

最後に、いちばん大切なことを。焚き火はどこでもしていいものではない。必ず施設のルールに従い、指定の炉や焚き火台、耐火シートなど、決められた場所と道具の上で火を扱う。芝や木デッキの上に直火は論外だ。

寝る前には、完全に消す。薪を燃やし切って灰にするか、時間をかけて水を回しかけ、灰が冷たくなるまで見届ける。「たぶん消えた」は消えていない。灰の処理は施設の指示どおりに。そして風の強い日は、火を起こさない勇気を持つこと。火の粉は想像より遠くへ飛ぶ。潔く諦めた夜のためにも、焚き火のある宿には温泉やサウナといった別の火が用意されている。

順番を守り、風を読み、手を出しすぎない。それだけで火は育つ。育てた火のそばで過ごす夜の深さは、焚き火を囲む夜(コラム)に書いた。次はあなたの手で、最初のマッチを擦ってほしい。

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