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泊まる形から選ぶ|寝台車・廃校・蔵・トレーラー
宿を選ぶとき、たいていは条件から入る。人数、予算、風呂、駅からの距離。けれど旅から帰ったあとに残っているのは、条件を満たしたことではなく、「あの建物に泊まった」という一点だったりする。銀色のトレーラーで目を覚ました朝や、校庭に立っていた夜のほうが、部屋の㎡数よりずっと長く記憶に残る。
寝台車に泊まる: CYMBALS シンバルス

岩手県岩泉町、道の駅いわいずみに隣接して2025年4月に開業した体験型リゾート。ここには、かつて大阪と青森を結んだブルートレイン「日本海」の寝台車が現存車両として置かれている。開放型A寝台1両とB寝台2両で、当時のままの姿で泊まれ、1両貸切もできる。
宿泊棟はほかにも多彩で、古民家をリノベーションした一棟貸し「リノベコ」、バレルサウナと人工温泉ジャグジー付きのグランピング棟などがそろう。食事は龍泉洞黒豚やいわて短角牛、イワナ・ニジマスを使ったシェフのコース料理(3日前までの完全予約制)。
寝台車がいいのは、動かないのに移動している気分が残るところだ。狭いことすら設計の一部で、そこに一晩いると、狭さは不便ではなく密度に変わる。
校庭に泊まる: Glamping&Port 結

静岡県島田市、旧湯日小学校をまるごとリノベーションした廃校グランピング。天井の高い「OPERA」やスイート仕様の「TWIN DOME」、玉ねぎ型の「LOTUS BELLE」、プライベートドッグラン付きの愛犬同伴棟まで多彩なテントが並び、各テントにガスグリルと屋根付きの食事スペースが付く。
校舎と敷地には体育館、卓球やビリヤードのプレイルーム、夏季限定の25mプール、教室を改装したワーキングスペースが残っていて、研修や合宿の団体貸切にも対応する。夕食は水に浸した木の板の上で焼くアメリカ流「ウッドプランクグリル」のBBQコース。定員6名、料金の目安は21,000円〜/泊。
夜、誰もいない体育館の前を通ると、自分の学校ではないのに懐かしくなる。建物が持っている時間を、そのまま借りている感覚がある。
蔵とツリーハウスと、輸入トレーラー: L-BASE

長野県松本市、松本駅の南の住宅街にある「泊まれる秘密基地」。5種8棟の1棟貸切で、大きな滑り台とツリーハウスのある平屋「ホリデーヴィラ」(最大8名)、クライミングウォールとハンモックの「シークレットベース」、明治時代の蔵を改装した2階建ての「蔵」、アメリカから輸入したトレーラーハウス、プロジェクター付きの「ログハウス」から選べる。
ログハウスを除く各棟にキッチンが付き、長期滞在にも対応する。宿泊者は敷地を走る「淵庵村森林鉄道」のミニ電車に無料で乗れる。EV充電設備もあり、料金の目安は13,000円〜/泊。
同じ敷地に蔵とトレーラーとツリーハウスが並んでいる状況は、よく考えると相当に変だ。けれど泊まる側にとっては、次はどれにするかという楽しみが残ることになる。
海に浮かんだまま泊まる: グランピング in カームラナイハーバー

宮崎県日南市、日向灘のウォーターフロントに建つグランピング。日南海岸国定公園の海と陸の境目にあり、宿泊者専用のプライベートハーバーを併設している。客室は吹き抜けのコテージ、オーシャンビューのドームテント6棟、そしてハーバーに停泊する小船やクルーザー、マオリ文化をモチーフにしたキャンピングカーまで。定員8名、料金の目安は26,400円〜/泊。
夕食は自社農園の野菜や日向灘の魚介、宮崎牛、ジビエを盛り合わせた地産地消のBBQ。SUPやシーカヤック、サビキ釣り、薪割り体験がハーバーで楽しめる。客室内に浴室はなく、共同浴室棟か系列の温泉を利用する形だ。
恐竜とコンテナ: デュラクス京丹後久美浜LABO

京都府京丹後市の久美浜。入口では2頭の巨大なT-REXがぶつかり合うオブジェが出迎え、静寂のなかに突然咆哮が響く。宿泊は29㎡のドームテント5棟と、プライベートヴィラ「コンテナスウィート」(132㎡・定員5名)の2タイプ。コンテナスウィートには専用サウナとプール兼水風呂、屋外用ジャグジーが備わる。
ふざけているようで、泊まる部分の設計は真面目だ。この振れ幅こそが、子ども連れにも大人だけの旅にも効く。
農場のエアストリーム: アイカフェファーム

山梨県北杜市、八ヶ岳と南アルプスと富士山を望む標高1,000mの高原にあるファームグランピング。オーガニック農場に滞在するアグリツーリズモ型で、客室はドームテント、キャンピングトレーラーのエアストリーム、三角屋根のインスタントハウス、ドッグテラスルームの4棟4タイプ。全棟で愛犬と泊まれる。
四季を通じて30品目以上を育てる農園での収穫体験が名物で、国産檜の貸切露天風呂とセルフロウリュのできる貸切サウナもある。夜は石積み職人による竪穴式のファイヤーピットを囲む。
形から選ぶという贅沢
条件で選ぶ宿は、条件を満たしていれば正解になる。形で選ぶ宿は、そこにしかないから正解も外れもない。同じ夜を過ごすなら、あとで人に話したくなるほうを選んでもいい。