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新しい宿は、何が違うのか|開業年から見えること
埼玉に、動物園と遊園地に隣接するグランピングができた。全棟にサウナがあり、夜は飼育係の音声ガイドを聞きながら動物を見に行ける。2026年3月の開業だ。
宿を探していると「2025年開業」「NEW OPEN」の文字によく出会う。新しさは、宿を選ぶ理由になるのだろうか。掲載データの開業年を数えてみると、思ったよりはっきりした形が出てきた。
開業年が分かるのは、68軒だけ
泊まり火の掲載654軒のうち、開業年を公式情報で確認できたのは68軒しかない。年別ではこうなる。
| 開業年 | 軒数 |
|---|---|
| 2021年以前 | 9軒 |
| 2022年 | 12軒 |
| 2023年 | 18軒 |
| 2024年 | 10軒 |
| 2025年 | 14軒 |
| 2026年 | 5軒 |
2022年以降が59軒で、記載のある宿の87%を占める。ただしこの数字を「貸切の宿の87%が2022年以降にできた」と読むのは間違いだ。新しい宿ほど開業年を掲げるからで、20年前にできた宿がわざわざ「2006年開業」と書くことは少ない。これは開業年の分布ではなく、開業年を書いている宿の分布にすぎない。
それでも分かることはある。この数年に新しくできた宿が確実に一定数あるということと、新しさそのものが売り文句になっているということだ。
今年できた宿は、5軒
2026年の開業を明記しているのは5軒。方角も規模もばらばらで、それがそのまま今の市場の形に見える。
神奈川のCOCO VILLA 箱根仙石原は1月の開業で、1日1組限定の一棟貸し。定員12名(推奨8名)の3LDKに、BURROW社の卵形サウナとHUUMの電気ストーブ、焚き火、4口ガスのフルキッチンを備える。温泉はなく、サウナと火に振り切った構成だ。御殿場ICから約20分、72,000円〜/泊。
大分のRakuten STAY VILLA 由布院温泉は2月開業の全20室。全室に自家源泉の客室風呂とプライベートサウナが付き、高温サウナはセルフロウリュができる。泉質は肌に優しいアルカリ性単純泉。Dタイプはドッグラン付きで、湯布院ICから車で約3分。50,000円〜/泊。
冒頭の埼玉がグランフィルリゾーツ東武で、3月開業。東武動物公園に隣接する、日本初という「グランピング×動物園×遊園地」の複合リゾートだ。プライベートドッグラン付きの「シンフォニーヴィラ」と、全棟にサウナを備え夜空を天井に見立てた「アドベンチャードーム」の2種類。宿泊者限定で、飼育係の音声ガイド付きで夜の動物を見る「アドベンチャー・ナイト」もある。
沖縄の琉心 RUSIN Private Pool Villa ONNAは7月開業で、恩納村の全6棟。全室プライベートプール付きで、70㎡超の客室にキッチンとBBQ設備を備え、最大8名。109,000円〜/泊。
三重・伊賀のグランパークさるびの温泉は、大山田温泉「そうぞの森さるびの」に併設したドーム型グランピング。チェックインは本館でQRコードを読み込むだけで、露天風呂には酒樽風呂や升風呂が並ぶ。忍者装束で挑むボルダリングもある。素泊まり4名利用時で12,500円〜/人。
去年できた宿から、4軒
2025年開業の14軒からも挙げておく。
青森の桜楽 Moana 深浦は4月開業。白神山地の西麓、日本海に沈む夕日を望む1日1組限定の貸切宿で、日本でも珍しい蔵サウナを備える。JR五能線「十二湖駅」から車で約3分。最大8名、56,000円〜/泊。日本のどこに、貸切の宿はあるかで「青森県は2軒」と書いたが、その1軒がこれだ。
徳島のBAYFRONT VILLA TAMATEは1月開業。阿南市橘町の、海を見渡す両面ガラス張りの1日1組限定ヴィラで、檜のバレルサウナと専用BBQスペース、焚き火スペースを備える。
滋賀のLAKE villa CHITOSEは8月開業の、琵琶湖畔・彦根の一棟貸切。定員12名・寝室3室で、プライベートプールと信楽焼の露天風呂がある。ペットは頭数制限なしで泊まれる。275,000円〜/泊。
山梨のグランピングB&V富士山河口湖は12月開業で、富士ヶ嶺の全23棟。自家源泉から引く高濃度バナジウム鉱泉の客室風呂とプライベートサウナを全棟に備え、プール付きスイートから最大20名のツインドーム、ドッグキャビンまで6種類がある。
新しい宿は、絞って、足す
開業年が2024年以降の27軒と、掲載全体654軒を比べると、傾向の差が出る。
| 2024年以降の27軒 | 掲載全体 | |
|---|---|---|
| 1日1組・一組限定 | 37% | 19% |
| サウナ | 74% | 59% |
| プール | 48% | 32% |
| 温泉 | 41% | 35% |
棟数を絞り、設備を足す。新しい宿はこの方向にはっきり寄っている。1日1組をうたう割合は全体の約2倍で、サウナ率は4軒に3軒。プールも半分近い。
温泉だけは差が小さい。これは湧くかどうかが土地で決まるからで、努力ではどうにもならない設備だからだろう。
ここで注意がひとつ。27軒という標本はかなり小さい。しかも「開業年を書く宿」は宣伝に力を入れている宿でもあるので、設備が充実している側に偏っている可能性がある。傾向として読み、断定はしないのが正しい距離だと思う。
新しい宿の、弱いところ
新しさは利点だけではない。予約する側から見た弱点もはっきりしている。
まず、口コミが少ない。開業半年の宿には、当然ながら滞在者の声がほとんどない。判断材料が公式情報しかない状態で決めることになる。写真も少ない。季節ごとの写真がまだ揃っておらず、冬の様子が分からない、といったことが起きる。
運用も固まっていない。チェックインの案内、清掃の範囲、火器の扱いなど、細かいところが開業直後は変わることがある。そして周辺の情報が薄い。「近くのおすすめ」を宿がまだ持っていないことがある。
逆に言えば、古い宿の強みはここの裏返しだ。何年も同じ場所で同じことをしてきた宿には、雨の日の過ごし方も、近所の店の閉まる時間も、蓄積されている。
それでも、新しい宿を選ぶ理由
そのうえで新しい宿を選ぶ理由があるとすれば、今の基準で作られていることに尽きる。断熱と空調、各棟に独立した水回り、Wi-Fi、セルフチェックイン。10年前には特別だったものが、いまは初期設計に入っている。上の数字はその結果として出てきたものだ。
新しさは、宿の良し悪しではなく設計思想の年代を示している。開業年は、その宿が何を当たり前だと思って作られたかの目印だ。そう考えると、比べ方が少し楽になる。
よくある質問
- 今年できたばかりの貸切の宿はありますか?
- あります。泊まり火の掲載で2026年の開業を公式に明記しているのは5軒です。箱根仙石原のCOCO VILLA(1月)、由布院のRakuten STAY VILLA(2月)、埼玉・白岡のグランフィルリゾーツ東武(3月)、沖縄・恩納村の琉心 RUSIN(7月)、三重・伊賀のグランパークさるびの温泉です。
- 新しい宿と古い宿では何が違いますか?
- 掲載データでは、2024年以降に開業した27軒は1日1組・一組限定をうたう割合が37%(全体19%)、サウナが74%(全体59%)、プールが48%(全体32%)でした。棟数を絞って設備を足す方向に寄っています。ただし27軒という小さな標本なので傾向として読んでください。
- 開業年はどこで分かりますか?
- 公式サイトの案内文やニュースリリースです。ただし記載があるのは掲載654軒のうち68軒だけで、書いていない宿が古いとは限りません。新しい宿ほど開業年を掲げる傾向があります。


