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一歩も外に出たくなかった一泊|SolaVilla 海テラス南あわじ 実泊記
「宿にお金を掛けて、後悔しかしたことがなかった」。
正直に書くと、これがずっとの本音でした。良い部屋に泊まっても、結局はチェックインして、少し景色を見て、寝て、朝食を食べて、帰る。値段のわりに、記憶に残るものは意外と少ない。そう思っていました。
その考えが、この一泊でひっくり返りました。泊まり火という媒体をはじめようと思った、まさにその場所です。淡路島の西海岸に建つ一棟貸しヴィラ「SolaVilla 海テラス南あわじ」。あらためて編集部として泊まってきたので、撮り下ろしの写真とともに、あの一日をそのままお伝えします。
鍵を受け取った、その瞬間から
訪れたのは、二〇二五年の十月。同棲しているパートナーと二人、レンタカーで西海岸をたどって向かいました。泊まったのは、露天風呂の付いた二階の一棟。
扉を開けて、外に出て、思わず声が出ました。海に向かって開いたテラスに、露天風呂と、ソファと、BBQコンロ。全部が「外」にある。手すりの向こうはもう、遮るもののない播磨灘だけです。
チェックインからチェックアウトまで、この家はまるごと自分たちのもの。そう実感した瞬間に、旅の輪郭が変わりました。「どこへ行こうか」ではなく、「ここで何をしないでいようか」。予定を立てる旅ではなく、予定を消していく旅の始まりでした。
一日に四回、海が表情を変える
この宿のいちばんの贅沢は、露天風呂でした。
驚いたのは、同じ湯なのに、昼と夕方と夜と朝で、まったく別の海が見えたことです。昼は光が跳ねる青。夕方は金色に溶けていく水面。夜は暗がりの奥に潮騒だけ。朝はひんやりと澄んだ藍。
波の音を聞きながら、入っては出て、また入る。それを何度繰り返したか、もう覚えていません。時間を測るのをやめた、というのが正しいかもしれません。誰にも気兼ねしない貸切だから、髪が乾く前にまた湯へ戻れる。この「何度でも」が、一泊の密度をまるごと変えてしまいました。
宵のテラスで、日が落ちるのを待つ
お酒は、来る途中に最寄りのスーパーで買い込んでおきました。DAIYAME(濱田酒造の甕貯蔵芋焼酎)のソーダ割りと、ほろよい。特別なものではありません。でも、この場所で飲むと、それがいちばんのご馳走になる。
空がゆっくりと色を変えていきます。オレンジから桃色、そして藍へ。雲の縁がいちばん赤くなる数分間は、二人とも言葉が少なくなりました。
初めて、宿の料理を「本当に美味しい」と思った
夕食は、宿の食事プランをお願いしていました。
正直、これまでホテルや旅館の料理で、心から美味しいと思えたことは一度もありませんでした。値段の記憶ばかりが残る、あの感じです。ところがこの夜は違いました。テーブルに運ばれてきた木の三段重を開けて、一皿ずつ口に運ぶたびに、「あ、これは本物だ」と分かる。
添えられていたのは、シェフの自己紹介を書いた一枚の紙。その自信に、料理はきちんと応えていました。しかも食材は、肉も野菜も淡路産。前菜の一つひとつまで手を抜いていない。そして主役は、見事なサシの入った淡路牛です。
自分たちのペースで、テラスのコンロで焼きながら食べる。急かす人は誰もいない。甘い淡路の玉ねぎがとろりと色づくのを待って、頃合いの肉を頬張る。焼き加減も、飲むお酒も、話す速さも、全部こちらのもの。料理が美味しいのは当然として、「自分たちで焼いて、自分たちの時間で食べる」という体験そのものが、味を何倍にもしていました。
星を見上げながら、将来の話をした
日がすっかり落ちると、空に星が出はじめました。
街の灯りから離れたこの海辺は、夜がちゃんと暗い。だから星がよく見えます。しばらくのあいだ、星空を眺めながらお酒を嗜んで、二人で将来のことを、深く、楽しく話し合いました。
不思議なもので、こういう話は、予定の詰まった旅先ではなかなか出てきません。何もしなくていい時間、誰にも邪魔されない場所。その二つが揃って初めて、大事な話は静かに始まるのだと思います。この宿がくれたいちばんの贈り物は、たぶんこの時間でした。
朝も、海の前で
朝食も宿が用意してくれていました。厚みのあるサンドイッチに、淡路島のヨーグルト、淹れたてのコーヒー。
前の晩に食べきれなかったお肉が少し残っていたので、朝もコンロで焼きました。朝日の入るテラスで、昨日とはまた違う青い海を眺めながらの一皿。贅沢というのは、こういう「昨日の続きを、今日もう一度」みたいな、なんでもない時間のことなのかもしれません。
騙されたと思って、宿を主役にした旅を
チェックアウトの時間まで、私たちは結局、一歩も外に出ませんでした。観光もしていません。それでも、これまでのどんな旅よりも満ちていました。
もしあなたが、昔の私と同じように「宿にお金を掛けても、大して記憶に残らない」と思っているなら。騙されたと思って一度、宿そのものを主役にした旅に出てみてほしいのです。目的地は宿。予定は、なし。一歩も外に出なくていい。
海に開いた湯に何度も浸かって、日が落ちるのを眺めて、自分たちで焼いた肉を食べて、星の下で明日の話をする。それだけで、旅は十分すぎるほど豊かになる。泊まり火は、この一泊から始まりました。
この夜を過ごした宿|SolaVilla 海テラス南あわじ

淡路島・南あわじの西海岸、オーシャンフロントに全棟が並ぶ一棟貸しのリゾートヴィラ。各棟に露天風呂を備え、愛犬と泊まれる棟もあります。料金・空室・食事プランの詳細は、公式サイトでご確認ください。