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台所はヴィラに、大浴場はグランピングに|設備が分かれる理由
台所があるのは、ヴィラの68%とグランピングの27%。
温泉が引かれているのは、ヴィラの4%とグランピングの27%。
同じ設備の話をしているのに、寄る向きが正反対だ。泊まり火に掲載している654軒の内訳は、貸切ヴィラが321軒、グランピングが333軒。数の上ではきれいに半々になる。ところが中身は半々ではない。そして、寄り方には理由がある。
いちばん大きな差は、台所だった
設備の記載を宿の種類ごとに数え直すと、最も差が開いたのはキッチンだった。ヴィラ321軒のうち221軒(68.8%)に対して、グランピングは333軒のうち90軒(27.0%)。2.5倍の開きがある。
プールも同じ向きで、ヴィラ43.0%に対してグランピング22.5%。ジャグジー、客室温泉も、いずれもヴィラのほうが高い。
理由は考えれば単純で、ヴィラは家だからだ。家には台所があり、風呂があり、必要なものが建物の中にそろっている。一棟貸しとは、その家をまるごと借りるということでしかない。
逆向きの差は、湯にあった
反対に、グランピングのほうが大きく上回る設備がある。湯だ。
温泉を引いているのはヴィラ13軒(4.0%)に対してグランピング91軒(27.3%)で、約7倍。共用温泉はヴィラ5軒(1.6%)に対してグランピング36軒(10.8%)で、7倍。露天風呂もグランピングのほうが高い(26.1%対17.4%)。本文まで見ると差はもっとはっきりして、「大浴場」に触れているのはグランピング40軒に対してヴィラは3軒だけだった。
なぜか。グランピングの棟は小さいからだ。ドームテントやトレーラーの中に大浴場は入らない。だから風呂は棟の外に出され、敷地の真ん中や本館に集約される。福井のGRAN FOREST 越前美山は館内の宿泊棟に地下約1000mから湧く天然温泉の大浴場があり、グランピング利用者も無料で入れる。大分のTHE VILLAGEはクラブハウスの大浴場にタオルもドライヤーもそろうので、手ぶらで行ける。
集約すると、質を上げられる。各棟に小さな風呂を12個つくるより、大きな湯を1つつくるほうが、湯量も眺めも確保しやすい。グランピングに温泉が多いのは、そういう構造の帰結でもある。
その代わり、夜に外を歩くことがある
集約には裏がある。風呂に行くのに、棟を出るということだ。
秋田の99glamは、ドームの中で眠り、トイレと風呂は隣の旅館「いちゑ」の館内にある。岐阜の満天 庵は棟の中に浴室もトイレもないため、入浴は隣接する天然温泉「満天の湯」を無料で使う。同じ岐阜のHOKO ENAはシャワーが管理棟、入浴は恵那山荘の大浴場。岡山のヒルゼン高原グランピングは、浴室とトイレが宿泊管理棟の共用スペースだ。千葉のLUMP COURT いすみはシャワールームとトイレが別棟、山梨の星降るドーム富士はテントのすぐ近くに宿泊者専用のシャワー棟とトイレを置いている。
これは欠点ではなく設計だ。ただ、冬の夜に、あるいは子どもを連れて、外を歩くかどうかは先に知っておいたほうがいい種類の情報になる。トイレが棟内にあるかどうかは、雨の日にいちばん効いてくる。
BBQがほぼ全棟にある理由
グランピングでいちばん普及している設備はBBQで、333軒中320軒(96.1%)。ヴィラも246軒(76.6%)と多いが、グランピングはほぼ全棟だ。
これも台所の話と裏表になっている。棟の中で料理ができないなら、外で焼くしかない。グランピングのBBQは選択肢というより前提に近い。逆にヴィラでは、キッチンとBBQの両方があって、その日の気分で選べる宿が多い。
「作る」ならヴィラ、「焼く」ならグランピング。乱暴だが、確率としてはそう言える。
洗濯機という、逆からの証拠
もうひとつ、仮説を裏から確かめられる設備がある。洗濯機だ。
設備タグには無いので本文を数えると、洗濯機や乾燥機に触れているのはヴィラ31軒に対してグランピング7軒。台所と同じ向きに、はっきり寄っている。生活の機能は建物の中にある、という仮説どおりだ。
面白いのは、その7軒の中身だった。長野のOAK VILLAGEはIHキッチンとバスルーム、洗濯機を備えたトレーラーハウス。静岡の河津浜ハウス BLUE MOONはA・B・C棟がそれぞれ独立していて、水洗トイレとシャワールーム、洗濯機スペースを持つ。香川のビーチスパ津田は調理器具のそろったキッチンに洗濯機まであり、長めの滞在に対応する。
グランピングと呼ばれていても、棟が「建物」の形をしていれば、生活の機能が中に入ってくる。設備を決めているのは宿の呼び名ではなく、建物の形のほうだ。
ヴィラ側の例外も同じ理屈で説明がつく。大浴場を持つヴィラ3軒のうち、熱海のグランデー海森と風 熱海は1棟の中に源泉かけ流しの檜風呂とサウナ、水風呂を置いた「大浴場」を持ち、伊豆のブルーラグーン土肥は各部屋の風呂に加えて2つの大浴場、熊本のアコンカグア・リゾーツは貸切風呂と岩風呂の大浴場を備える。いずれも棟が大きい、あるいは複数棟のリゾートで、集約が成り立つ規模になっている。
サウナだけが、まったく同じだった
ここまで差ばかり並べてきたが、ほとんど差がつかなかった設備がある。
サウナは、ヴィラ197軒(61.4%)に対してグランピング198軒(59.5%)。数も割合も、ほぼ同じだ。駐車場(50.8%対51.4%)とWi-Fi(46.7%対41.4%)も近いが、これは宿の形と関係のない基礎設備だから当然とも言える。サウナは違う。
なぜ同じになるのか。サウナが生活の機能ではないからだと考えられる。台所や洗濯機や風呂は、泊まるという行為に必ずついてくる機能で、だから建物の形に縛られる。サウナは違う。無くても泊まれるものを、宿が選んで足した設備だ。
だから、家であるヴィラにも、施設であるグランピングにも、同じ勢いで入った。両者を分けている線の外側にサウナがある、と言い換えてもいい。この10年でサウナが宿に入っていった速さは、新しい宿は何が違うのかでも見たとおりだ。
選ぶときに、実際に効くこと
まとめると、線は一本しかない。生活の機能を、建物の中に置くか、外に集約するか。
中に置くヴィラなら、台所で作れて、洗濯ができて、風呂まで数歩。そのかわり湯は普通の風呂で、温泉が引かれている確率は低い。外に集約するグランピングなら、大きな湯や温泉に入れる確率が上がる。そのかわり、風呂とトイレに行くのに棟を出ることがあり、料理は焼くことが中心になる。
だから選ぶときの問いは「ヴィラとグランピング、どっちが好きか」ではない。何日泊まるのか、自炊をするのか、夜に外を歩けるか。その3つで、たいてい答えが決まる。用語そのものの整理はヴィラ・グランピング・コテージ・貸別荘の違いにまとめてある。
この数字について
母数は掲載654軒(公開中、重複を除く)で、ヴィラ321軒とグランピング333軒。設備の割合は、宿の公式情報にもとづく設備タグを数えたもので、書いていない設備は数えていない。だから「グランピングの73%にキッチンが無い」ではなく、「27%にキッチンがあると確認できた」が正しい読み方になる。
大浴場40軒対3軒と洗濯機31軒対7軒は、設備タグではなく本文の記述を数えた数字だ。本文の書き方は宿によって濃淡があるので、タグの集計よりは粗い。傾向を見るための数字として読んでほしい。
そして設備は増える。温泉を掘る宿もあれば、サウナを足す宿もある。予約の前に公式サイトで確認を。
よくある質問
- 貸切ヴィラとグランピングでは、設備がどう違いますか?
- 生活の機能をどこに置くかが違います。泊まり火の掲載でキッチンを備えるのはヴィラ321軒中221軒(68%)に対してグランピングは333軒中90軒(27%)。逆に温泉を引いているのはヴィラ13軒(4%)に対してグランピング91軒(27%)、共用温泉はヴィラ5軒に対してグランピング36軒でした。
- グランピングでは風呂が部屋になくても泊まれますか?
- 泊まれますが、棟の外に出る前提の宿があります。秋田の「99glam」はトイレと風呂が隣の旅館の館内、岐阜の「満天 庵」は入浴が隣接する温泉施設、岡山の「ヒルゼン高原グランピング」は浴室とトイレが宿泊管理棟の共用スペースです。夜や冬に外を歩くことになるので、事前の確認をおすすめします。
- 自炊をしたいなら、ヴィラとグランピングのどちらですか?
- ヴィラのほうが確率は高いです。キッチンを備えるのはヴィラの68%に対してグランピングは27%で、2.5倍の開きがあります。一方でBBQ設備はグランピングの96%にあり、ヴィラは77%。「作る」ならヴィラ、「焼く」ならグランピングという分かれ方です。
- サウナはどちらに多いですか?
- ほぼ同じです。ヴィラ321軒中197軒(61.4%)、グランピング333軒中198軒(59.5%)で、掲載の中で最も差がつかない設備でした。サウナは料理や洗濯のような生活の機能ではなく、宿が選んで足した体験だからだと考えられます。
- グランピングに洗濯機はありますか?
- 少数です。本文で洗濯機や乾燥機に触れているのはヴィラ31軒に対してグランピング7軒でした。しかもその7軒の多くはトレーラーハウスや独立した棟で、テントではなく建物の形をしています。長期滞在で洗濯をしたいなら、建物型かどうかで見分けるのが早道です。




