ホーム /読みもの /高級貸別荘とは何か|値段とともに増える設備は、プールだけだった
高級貸別荘とは何か|値段とともに増える設備は、プールだけだった
「高級貸別荘」「高級コテージ」。そう入力して探している人は多い。
ところが宿の側は、その言葉をほとんど使っていない。
掲載している654軒の紹介文を数えたら、自分を「高級」と呼んでいる宿は16軒だった。探す側の言葉と、書かれている言葉がずれている。
「高級」と名乗っている宿は、654軒のうち16軒
まず語そのものを数えた。「高級」または「ラグジュアリー」が紹介文のどこかに出てくるのは45軒(7%)。そのうち、宿そのものをそう呼んでいるのは16軒だけだった。
はっきり名乗っているのは、たとえばこのあたりになる。
- 神奈川のシエロ箱根仙石原は「富士山を望む高級貸別荘」
- 同じ神奈川の歩羅无 湯河原 FURANは「一棟貸し高級ヴィラ」
- 長野のFountainhead Hakubaは「1日1組限定の高級シャレー」
- 北海道のTAIGA ニセコは「高級一棟貸しのコレクション」
- 兵庫のシーン88と宮崎のwanderlust, AOSHIMAは「1日1組限定のラグジュアリーヴィラ」
では残りの29軒は何を高級と呼んでいたのか。読んでいくと、高級なのは宿ではなかった。
部屋タイプの名前だったものが一番多い。茨城のグランマーレ茨城大洗の「ラグジュアリードーム」、滋賀のレイクサイドテラス琵琶湖の「ラグジュアリーコテージ」、埼玉の秩父別邸 木叢の「ラグジュアリースイート」。いずれも施設の等級ではなく、施設の中のグレード名だ。
次が食事プランの名前で、6軒あった。和歌山のドッグにグッドなグランピング和歌山北は熊野牛ステーキがメインの「ラグジュアリーBBQ」をスタンダードBBQの上に置いている。
そして残りは、モノと土地が高級だった。沖縄のResortVilla-KAPUKA 瀬底島はBALMUDAなどの「高級家電」、愛媛のGlamp Terrace グランテラスはシモンズという「高級ブランド」のベッド、兵庫のLentement suite-villa AWAJIは「高級システムキッチン」。神奈川のTHE HOUSE Koajiro marina suiteは油壺という「高級別荘地」に建っている。
設備は施設ではなく部屋に付くで見たのと同じ構造だ。高級という言葉も、宿にではなく宿の中の何かに付いている。
では、どこから上が高級なのか
名乗りで探せないなら、値段で引くことになる。
ただし、ここで母数が小さくなる。654軒のうち1棟あたりの料金が分かるのは246軒で、1人あたりの料金が71軒。残り337軒は料金が分からない。公式サイトに載っていない宿は、高いのか安いのかも分からない。
その246軒を並べると、1棟1泊の下限の中央値は5万円。貸切ヴィラだけなら7万円、グランピングだけなら3万4,000円になる。
| しきい値 | 軒数 |
|---|---|
| 1棟5万円以上 | 124軒 |
| 1棟7万円以上 | 82軒 |
| 1棟10万円以上 | 46軒 |
| 1棟15万円以上 | 19軒 |
| 1棟20万円以上 | 10軒 |
| 1棟30万円以上 | 4軒 |
10万円で線を引くと46軒。246軒の19%にあたる。そしてこの46軒のうち45軒が貸切ヴィラで、グランピングは1軒しかない。福島の空の庭クレセントムーンが15万円で、グランピングで1棟10万円を超えるのはここだけだった。
最高額は山梨のヴィラ・セゾン・フジの33万8,000円。定員24名の建物だ。
値段とともに増えた設備は、プールだけだった
ここからが本題になる。値段が上がると、何が増えるのか。
グランピングを混ぜると「グランピングは安くてプールが少ない」という別の話になってしまうので、1棟料金の分かる貸切ヴィラ157軒だけを3つの帯に分けて数えた。
| 5万円未満(47軒) | 5万〜10万円(65軒) | 10万円以上(45軒) | |
|---|---|---|---|
| プール | 13% | 40% | 67% |
| ジャグジー | 13% | 28% | 40% |
| サウナ | 36% | 74% | 69% |
| キッチン | 74% | 68% | 76% |
| BBQ | 72% | 69% | 69% |
| 温泉系 | 23% | 25% | 29% |
| 1日1組 | 21% | 29% | 36% |
| 定員の中央値 | 8名 | 8名 | 8名 |
帯をまたいできれいに増え続けたのは、プールとジャグジーの2行だけだった。プールは13%から67%へ5倍、ジャグジーは13%から40%へ3倍になる。
いちばん下の行も見てほしい。定員の中央値は3つの帯すべてで8名だった。値段が3倍になっても、泊まれる人数は変わらない。高い宿は、大きい宿ではない。
サウナは、5万円で頭打ちになる
サウナの行の動きが面白い。36%から74%へ跳ね上がり、そこから69%へ少し下がる。
つまりサウナは、5万円を超えた時点ですでに7割の宿が持っている。それより上の帯に行っても増えない。「サウナ付き」は5万円台の貸切ヴィラの標準装備になっていて、高級帯の目印ではなくなっている。
これは探す側にとって良い知らせだ。サウナが目的なら、10万円を出す理由は薄い。サウナのある宿から5万円台を探せば、同じ確率でサウナに当たる。
「サウナ付き」395軒を数えた回で、型式とロウリュと水風呂と外気浴の4点がそろって書かれているのは7軒しかないと書いた。サウナは数が増えても中身が増えにくい設備で、そのことが価格帯にも出ている。
BBQとキッチンと温泉は、値段と関係なかった
動かない行が3つある。
BBQは72%から69%、69%。キッチンは74%から68%、76%。温泉系は23%から25%、29%。どれも帯をまたいでほとんど変わらない。
BBQとキッチンが動かないのは、これが貸切ヴィラの前提装備だからだろう。食事を自分で用意する形式なので、安い宿にも高い宿にも同じように付いている。
温泉が動かないのには別の理由があると思う。温泉は、その土地にあるかないかで決まる。掘れない場所にはどれだけ払っても湧かないし、湧いている場所なら安い宿にも引ける。「温泉付き」250軒の中身で書いたとおり、温泉のある宿は全体の4割近くあって、価格帯に偏っていない。
プールは逆だ。土地の条件ではなく、建てるかどうかで決まる。だから値段に乗る。
高いのは水まわりだが、どの水まわりかで性質が違う。
増えるのは、浴室の数と「誰にも会わないこと」
もう2つ、帯とともに増えるものがあった。
浴室の数と、1日1組かどうかだ。
浴室の数は公式に明記している宿が少ないので、数字は小さい。5万円未満では明記8軒のうち2室以上が0軒、5万〜10万円では13軒のうち2軒、10万円以上では9軒のうち6軒になる。標本は小さいが、方向は分かる。
1日1組は21%から29%、36%へ。ゆるやかだが増え続ける。
定員の中央値が8名で変わらないのに、浴室が増えて、1組貸しが増える。つまり同じ8人が、順番を待たずに風呂に入れて、ほかの客に会わなくなる。
定員は増えても風呂は増えないで、定員8名以上の27軒のうち16軒が浴室1つだと書いた。高級帯で増えるのは、まさにその1つだった浴室の2つ目だ。
買っているのは広さではなく、重ならないことだと思う。
1棟料金なので、人数で割ると幅が出る
最後に実務の話をひとつ。
1棟あたりの料金は、何人で行くかで意味が変わる。複数棟をまとめて借りる記述のある施設を外し、1棟貸しに限って1人あたりに割り直してみた。
10万円以上の21軒の中央値は1万6,700円。10万円未満の49軒は7,000円だった。平均としては、やはり倍以上ちがう。
ただし中を見ると幅が大きい。
| 宿 | 1棟料金 | 定員 | 1人あたり |
|---|---|---|---|
| COCO VILLA 軽井沢 | 109,000円 | 12名 | 9,083円 |
| オーシャンリゾート館山 | 131,000円 | 14名 | 9,357円 |
| ヴィラ・セゾン・フジ | 338,000円 | 24名 | 14,083円 |
| THE PANALI 宮古島 | 308,000円 | 10名 | 30,800円 |
| UMITO VILLA 鎌倉 材木座 | 228,000円 | 4名 | 57,000円 |
同じ「1棟10万円超」の中で、1人あたりは9,083円から5万7,000円まで6倍ちがう。33万8,000円のヴィラ・セゾン・フジが、10万9,000円のCOCO VILLA 軽井沢の1.5倍で済むのは、定員が24名あるからだ。
1棟料金だけを見て高級と判断すると、人数の情報が落ちる。料金相場レポートでも触れたが、1棟単位の宿では「何人で割るか」が価格表より効く。
「県名+高級」で探すと、母数が小さくなる
「高級貸別荘」は、たいてい県の名前と一緒に検索される。そこで県別に見ておく。
1棟10万円以上の46軒がある県は、47都道府県のうち16だけだった。沖縄14軒、神奈川5軒、長野5軒、静岡3軒、千葉3軒で、この5県で30軒を占める。
ただ、この偏りは「高い宿がある県/ない県」を意味しない。料金の公開率が県ごとに全く違うからだ。
| 県 | 掲載 | 1棟料金が分かる | 10万円以上 |
|---|---|---|---|
| 沖縄 | 50軒 | 34軒(68%) | 14軒 |
| 長野 | 31軒 | 17軒(55%) | 5軒 |
| 神奈川 | 32軒 | 14軒(44%) | 5軒 |
| 山梨 | 41軒 | 7軒(17%) | 2軒 |
| 三重 | 23軒 | 4軒(17%) | 0軒 |
| 京都 | 24軒 | 1軒(4%) | 1軒 |
三重に1棟10万円以上が0軒というのは、三重に高い宿がないという意味ではない。三重の23軒のうち料金を公開しているのが4軒しかないので、比較できないという意味になる。京都はもっと極端で、24軒のうち1軒だけだ。
県で絞るほど、値段での比較はできなくなる。沖縄の貸切ヴィラのように公開率の高い県なら価格で選べるが、そうでない県では別の軸で絞るしかない。
高級という言葉を、設備に置き換える
ここまでの数字を、探すときの手順に直すとこうなる。
- プールで絞る。値段と一緒に増えたのはここだけだった。プール付きの宿は貸切ヴィラ側だけで見ても、10万円以上の帯では3軒に2軒が持っている。
- 浴室の数を見る。定員が同じなら、浴室が2つあるかどうかが滞在の質を分ける。公式サイトに書いていなければ、問い合わせれば分かる。
- 1日1組かどうかを見る。設備表には出ないが、高級帯でいちばん静かに増えていた条件だ。
逆に、サウナとBBQとキッチンと温泉は、高級かどうかの判断材料にならない。5万円台でも同じ確率で付いている。この4つが目的なら、10万円を出す必要はない。
ヴィラ・グランピング・コテージ・貸別荘の違いでも書いたとおり、呼び名は施設が選ぶものなので、「高級」という形容詞も同じように当てにならない。条件から探すで設備とエリアを掛け合わせたほうが速い。
10万円の差が、何だったのか
数字を並べ終えて残ったのは、思っていたのと違う像だった。
高い宿は、大きくない。定員の中央値は8名のまま変わらない。設備の数も、サウナもBBQもキッチンも温泉も、安い宿と同じように付いている。
増えていたのは、プールと、浴室の2つ目と、1日1組という条件だけだ。
これは要するに、順番を待たないということだと思う。風呂が空くのを待たない。プールに他の客がいない。チェックインの時間に誰ともすれ違わない。8人で行って、8人のためだけに一晩が空いている。
「高級」という言葉が指していたのは、たぶん設備のことではなかった。同じ8人が、誰とも重ならずに過ごせること。それだけのために値段が倍になるというのは、考えてみれば分かりやすい話でもある。
よくある質問
- 高級貸別荘とは、いくらからのことですか?
- 決まった線はありません。掲載654軒のうち1棟あたりの料金が分かるのは246軒で、その中央値は5万円、貸切ヴィラだけなら7万円です。1棟10万円以上は46軒、15万円以上は19軒、20万円以上は10軒しかないので、「10万円から上」をひとつの目安にすると全体の上位2割弱に入ります。
- 「高級」と書いてある宿を探せばよいのでしょうか?
- それでは見つかりません。紹介文に「高級」「ラグジュアリー」という語が出てくるのは654軒中45軒で、しかも宿そのものをそう呼んでいるのは16軒だけです。残りは部屋タイプの名前や食事プランの名前、家電やベッドや別荘地が高級なのであって、宿の等級を言っているわけではありません。
- サウナ付きの宿は高級ですか?
- 価格帯の目印にはなりません。1棟料金の分かる貸切ヴィラ157軒を3つの帯に分けると、サウナのある割合は5万円未満で36%、5万〜10万円で74%、10万円以上で69%でした。5万円を超えた時点で7割に達し、そこから先は増えません。サウナだけが目的なら、10万円を出す理由は薄いということになります。
- 温泉付きのほうが高いのではないですか?
- 掲載データでは差がほとんど出ませんでした。温泉系の設備がある割合は5万円未満23%、5万〜10万円25%、10万円以上29%です。温泉はその土地にあるかないかで決まるものなので、値段に乗りにくいのだと思います。値段と一緒にはっきり増えたのはプール(13%→40%→67%)とジャグジー(13%→28%→40%)だけでした。
- 1棟10万円は高いですか?
- 人数によって変わります。複数棟をまとめる記述のない1棟貸しに限って1人あたりに割ると、10万円以上の21軒の中央値は1万6,700円ですが、定員12名のCOCO VILLA 軽井沢は9,083円、定員14名のオーシャンリゾート館山は9,357円です。定員4名のUMITO VILLA 鎌倉 材木座は5万7,000円で、同じ「1棟10万円超」の中に6倍の幅があります。




